【ゼノー工具×三洋金属対談】コロナ禍だからこそ新しいチャレンジを

こんにちは、三洋金属広報部です!

三洋金属では「資源の有効利用」を合言葉にした社会貢献、適切な処理と徹底した配慮による環境汚染の防止、限りある資源の再利用を推進していくことを目的として活動しています。

今回は岡山県内の企業であるゼノー工具株式会社の常務取締役 岸本晋一さんとの対談インタビューをお届けします!
岸本さんは前回の松本鉄工の杉原さんに引き続き、当社常務の黒本とは中学時代の同級生です。
コロナ禍においてできることは何か、地域活性のためにはどうすればいいかを地元愛たっぷりに語ります。ぜひお見逃しなく!

前回の対談記事はこちら

ゼノー工具株式会社とは

本日はよろしくお願いします!さっそくですが、ゼノー工具株式会社の事業内容について伺えますか?

岸本:金属製品の製造業で、主に工業用の刃物を作っています。例えば自動車の部品の穴あけに使われるドリルとか、プラスチック樹脂を切断する刃とかですね。祖父が創業者で、今59期目です。

黒本:刃物を製造する企業ってあまり聞かない気がするけど、県内では他にもあるの?

岸本:県内では数社くらいだと思う。特にうちはお客様の要望に合わせて一から刃物を作る受注生産スタイルだから、同じような「オーダーメイドでなんでも作ります」という会社はあまりない印象だね。

黒本:「オーダーメイドでなんでも」ができるのはすごいね。

岸本:そこがまさに当社のアピールポイント。お客さんも「こういう作業に使う刃物が欲しいけど、どんな物を作れば良いかわからない」ということが少なくないから、これまで蓄積してきた技術や知識でうちから提案ができるのは強みだね。

しかし刃物を取り扱う企業だと、安全面にはかなり気を配らないといけないですよね。会社として意識していることはありますか?

岸本:その点は、当社では「三つの安心」という標語で取り組みを行っています。

「三つの安心」と言いますと?

岸本:従業員が安心して働ける環境を作る、取引先が安心して当社と取引できるようにする、かつ使用者も安心して使用できる製品を作る。この「三つの安心」を常に意識しています。
刃物製品は、当然ながら取り扱いには十分な注意が必要です。当社で扱っている刃物は「蝋付け」と呼ばれる、蝋で接着した刃物なので、きちんと引っ付いていないと刃がぼろっと落ちる危険性もあるんです。そういったことが起きないように日々作業者が腕を磨き、安心して使ってもらえる製品を提供しています。

黒本:なるほど。使用者にとって安全な製品を作ることは、取引先も安心して製品を購入できるということで、それが製品を作る従業員の安心にも繋がると。

岸本:そう、まさにそれが「三つの安心」。
あと従業員の安心については、売上高や経常利益、製品ごとの価格や売り上げも全部公開していて、会社として利益が出ているか出ていないかはっきりと分かるようになっている。

黒本:そうなんだ!普通は作ってる側の人や従業員はそこまでは知れないから、かなり思い切ってるね。

岸本:そこをあえてオープンにすることで「なるべくお給料については不景気な状態でも最大限に出せるようにしてるよ」っていうのを数字で理解して、心理的な安心と安全を実感しながら働いてもらいたいという気持ちがあるんだ。

コロナ禍での変化を受け入れて、柔軟な対応を

従業員の安心にも力を入れているだけに、今回のコロナは悩みも多いかと思います。何か大きな変化はありましたか?

岸本:そうですね…受注は減りましたし、今は残業もゼロになっています。
あとうちは岡山の本社の他に中国の工場と名古屋支社があるんですが、今は出張を控えているので、直接出向いてやりとりをすることができなくなってしまいました。

黒本:支社が名古屋にあるんだね。もともと取引先は県外が多い?

岸本:ほとんどが国外と県外で、県内の取引は20%もないんじゃないかな。樹脂関係の仕事は愛知に集中していることもあって、それで名古屋支社を立ち上げたっていう経緯もあるんだ。

黒本:それだと出張が制限されること自体がダメージだね…。

岸本:そうなんだよ。それでもなんとか対策を打って仕事は続けないといけないから、コロナ禍に入ってからは、産業医の先生にコロナの最新事情について教えてもらっている。
無策で「仕事を続けます」って言っても、不安でしかないからね。今も安全衛生委員会を月一で開いて、産業医も同席の上で対策の意見交換をしてるよ。

本来は安全衛生委員会は、不定期開催でたまに産業医を呼んで…という会ですよね。まさに従業員の安心のために、の実践ですね。

黒本:色々と初めてのことだらけで、場当たりで対応していかないといけないのは、うちの会社でもとても苦労しているからわかるよ。
社会全体が働き方の方向転換を迫られている時期だからこそ、ITツールの導入やリモート勤務で柔軟に変化していく必要があるなって感じてる。だから三洋金属でもどんどん新しいITツールの導入を進めてるんだ。

岸本:三洋金属さんはIT文化が進んでいる会社だから、その辺りの相談はぜひさせて欲しいな。うちでも色々と試行錯誤していて、会議をオンラインに切り替えるためにマイクとカメラを購入したよ。
急に全社単位では難しいけど商談もいずれオンライン化して、少しずつ働き方を変化させていきたいと思ってる。幸い取引先に商社や大手企業も多いから、最先端のIT文化で良いなと思ったところは取り入れていくつもり。

黒本:コロナは残念ながらしばらく続くだろうし、うちもまだまだIT化の最中という感じだから、同じ岡山の企業としてお互い協力していけるといいよね。

働き口の少ない地方都市だからこそ、積極的に地域雇用を

話題は少し変わりますが、ゼノー工具さんが地元岡山を活性化させるために取り組んでいることはありますか?

岸本:やはり地域雇用の促進ですね。現在当社で採用している多くの人は岡山出身在住の地元の人です。
先にも少しお話したとおり、刃物の製造業をやっている会社は岡山県内でも少なく、数社しかありません。そもそも全体の企業数自体が都会に比べて少ないことは否めないので、働き口の少ない地方都市だからこそ、積極的に地元の人を雇っています。

黒本:都市の活性化には地域雇用が最重要だというのは、これまで対談させてもらった人たちからも異口同音だったよ。ゼノー工具さんでは、普段は採用活動はどういうふうにしているの?

岸本:募集をかけることもあるし、インターンシップから採用することもある。
岡山の能力開発大学校と、岡山科学技術専門学校からインターンに来た子を採用してることもあるんだ。といっても、夏季に二週間くらいの短期間だから、見極めがすごく大変だけどね。

黒本:短い期間では人となりも能力もなかなか掴みきれなかったりするよね。岸本くんが重要視しているのはどういうポイント?

岸本:主体性かな。インターンの期間中にそれを発揮しろっていうのは難しいから、いずれ主体性のある人に成長してくれそうかどうかの将来性を見てる。
インターン制には、まずは自分たちで考えながらものが作れるっていうのを楽しんで欲しい。うちはオーダーメイドでカスタマイズして製品を作ってるから、普通の工場の仕事と違って流れ作業じゃない楽しさがある。その楽しさを学びとして吸収していける人は、いずれ主体性を持って会社を牽引する頼れる人物になれると思うんだよね。

黒本:会社を牽引して盛り上げてくれる人は、岡山県そのものを盛り上げてくれる人とニアリーイコールでもあるよね。

岸本:まさにそのとおり。だから地域を活性化のためにも、会社を盛り上げていくためにも、地域での採用には今後も力を入れていきたい。

伝統は残しつつ新しい挑戦を

地域活性、業務のIT化、コロナ対策と様々な取り組みをされているゼノー工具さんですが、今後の新たにこういうことをしたいという展望はありますか?

岸本:まずは岡山の刃物製造業として、もっと存在感を示していきたいですね。
刃物の製造業者で有名な企業は、大阪を中心に関西が多いんです。岡山企業は同業自体が少ないのもありますが、他府県の企業に比べるとまだまだ知名度が足りない。なので「刃物製造と言えば!」と県外でも名前が上がるような企業として研鑽していきたいと思っています。

黒本:三洋金属のブログも、県外の人たちにも自社を知ってもらいリサイクル業に関心を持ってもらおうというところからスタートしているから、すごく共感できる。
岡山県の刃物会社としてゼノー工具さんの名前が全国に知れ渡るのを想像すると、今からとてもワクワクするね。

岸本:コロナで大変なときだからこそ、これまでどおり目の前のことにコツコツと取り組んで、その結果として大都市企業にも張れるような存在感のある企業を目指せたらいいよね。
ただそれと同時に、こういうときだからこそ、今までのやり方から変えないといけない部分もあると思ってる。
だから今後は、既存の刃物としても存在感を示しながら、新しい分野にも取り組んでいきたいとも考えているんだ。

黒本:新しい分野ということは、刃物以外にもチャレンジするということ?

岸本:電池とか半導体のような、今まで自社ではやったことがない分野に手を伸ばせないか模索してる最中。まだ構想段階だけどね。
例えば将来、自動車が全て電気自動車になったら、今使っている部品は不要になるよね。すると自動車部品を作るための製品取引が多い当社は、時代に取り残されてしまう。そうならないために、今から新しい挑戦をしておいて損はないと思ってる。

黒本:なるほど、時代の変化に合わせて自分たちも変わっていくべき部分を見据えて考えているんだね。半導体を選んだのは理由があるの?

岸本:刃物に使う超硬(ちょうこう)という素材があって、それを使った半導体部品の需要などは無いか考えているんだ。これなら一番の強みである刃物の部分はしっかりと守りながら、裾野を広げていけるから。

黒本:なるほど!自社の強みとスキルを生かして新しい開発をしていこうということなんだね。それなら刃物製造の伝統は残しつつ、新規の開拓ができそう。
コロナで守りに入るだけでなく、こういうときだからこそ攻めていく姿勢だね…こんなかっこいい話を聞かされちゃ僕たちも負けていられないな。
色々と本当に大変な時期だけど、業界は違えどお互い切磋琢磨して頑張っていこう!

お二人とも、ありがとうございました!